トンボロ芸術村 金賞

「トンボロに向きたる磁針鳥渡る」

下土橋 渡 / 薩摩郡さつま町

審査員 園田 千秋 先生

季語は鳥渡る。季節は秋。俳句では秋になって、日本へ渡って来る鳥、鶴や鴨や鶫や鶸などの、群れて渡ってくる鳥を渡り鳥として句を作る。ところで、地図もないのに渡り鳥たちは、間違いなく目的地へ到達する。渡り鳥には磁場の方向を測るのに用いる磁針を備えているという。間違いなくトンボロへ渡ってくるのだ。ところで、トンボロを故郷とする人達にも、磁針があるのかもしれません。決して、故郷を忘れることはないのだろうと言うような、俳句の裏にある作者の思いを感じ取れます。作者もまた故郷があり、故郷を思いながら暮らしている一人なのでしょう。