俳句部門
優秀賞
「梅雨曇立札のみの番所跡」
審査員 園田 千秋 先生
日本の各地に番所(交通の要所を設けて、通行人や船舶などを見張り、徴税などを行った)があります。薩摩藩でも藩内各地に番所跡があります。そして、どこも板碑で跡地が示されているのが、ほとんどのようです。では、そのことと梅雨曇という季語とどうかかわるのでしょうか。二つの共通点は、ともに実体のない存在ということなのでしょうか。梅雨曇は梅雨という実態のない状態(雨のない状態)ですし、立札のみの番所も、番所という実態のない場所ということで、二つはつながると思います。そして、そう考えると実態のない存在というのは、もっとあるのではないかと思います。自分という存在を顧みせてくれる一句でした。