大賞 「鳴き交はす昼のこほろぎ流人墓」

大賞

「鳴き交はす昼のこほろぎ流人墓」

安楽 与喜子 / 姶良市

審査員 園田 千秋 先生

流人たちがささやきあっているかのように、昼のこおろぎが鳴き交わしています。鳴いているこおろぎの姿は見えません。そして、この地に流刑を受け、流人の定めとなった人がいて、罪を許されることなく、この地で亡くなったことを、我々は墓石から知るのみなのです。こおろぎの声は、時に鈴の音のようにも感じられます。流人という言葉は、マイナスイメージのある言葉です。確かに、犯罪に対する刑罰ですが、江戸時代以前の身分のある流人は、都の文化の伝達者という一面もあり、流刑地での待遇は、決して悪いものではなかったと言われています。だから、こおろぎの声は感謝を伝える声なのかもしれません。