大賞

「トンボロのボロの辺りに烏賊を干す」

里山 喜和子 / 鹿児島市

審査員 園田 千秋 先生

" 「烏賊を干す」が夏の季語
 初五から中七の「トンボロのボロの辺り」という描写が、ユーモアを感じさせる描写になっている。若干の諧謔味を感じさせる。また、「トンボロのボロ」という描写は、トンボロの広さ、長さのようなものをイメージさせる描写になっており、暮らしの一端が見えてくる感じがする。さらに、作者は「ボロ」ということばに「端っこ」という意味を与えたのだと思う。ただ、「ボロ」ということばの響きは、「ぼろもうけ」のぼろや「ぼろぎれ」のぼろに通ずる響きを持っている。だが、「ボロの方にあるぼろ家」という連想をしてはいけないと思った。もちろん作者にも、そういう連想はなかっただろう。
 西海岸の堤防の上に、干し場があるのも事実だ。"